高解像度化で行き詰まる典型が、倍率を上げたいのにVRAMが足りないというものです。
Hires.fix は画像全体を一度に扱うため、倍率がGPUの容量で頭打ちになります。無理に上げれば落ちるか、破綻します。
Ultimate SD Upscale は、この制約の外し方が違います。画像をタイルに分けて順番に処理するので、GPUの大きさが上限を決めません。
配布元: ultimate-upscale-for-automatic1111
基本の考え方は Hires.fix・アップスケール完全ガイド にまとめてあるので、そちらを読んでからのほうが分かりやすいはずです。
何が違うのか
| Hires.fix | Ultimate SD Upscale | |
|---|---|---|
| 処理の単位 | 画像全体を一度に | タイルごとに順番に |
| 倍率の上限 | VRAMで決まる | VRAMに縛られない |
| 時間 | 短い | 長い(タイル数だけ回す) |
| 得意 | 1.5〜2倍 | それ以上 |
トレードオフは時間です。 タイルの数だけ処理を回すので、全体を一度に処理するより時間はかかります。その代わり、容量の壁がなくなります。
低スペックでも動く
配布元はこう説明しています。
512x512 のタイルサイズを使えるので、どのビデオカードでも動作する
タイルを小さくすれば、1回あたりの処理は軽くなります。 8GBでも4Kを狙える、というのがこの手法の要点です。
VRAM全般の詰め方は VRAM最適化ガイド を参照してください。
Denoise を上げられる
ここが実務上いちばん大きい違いです。
Hires.fix では Denoise を 0.6 以上に上げると、人物が二重になったり別人になったりします。実用域は 0.3〜0.5 でした。
Ultimate SD Upscale について、配布元は次のように説明しています。
大きめの Denoise(0.3〜0.5)を使っても、アーティファクトが多く出ることはない
同じ帯を「安心して使える」と位置づけているのが違いです。タイル単位で処理するため、全体構図が崩れる余地が小さいからだと考えられます。
つまり、ディテールを足しながら大きくするという本来やりたいことが素直にできます。
主要なパラメータ
拡張が持つ設定項目のうち、結果を左右するものを整理します。
| 項目 | 役割 |
|---|---|
| Tile width / height | タイルの大きさ。小さいほど軽く、回数が増える |
| Padding | タイルの周囲に余分に含める幅。継ぎ目対策 |
| Mask blur | タイル境界のぼかし量。継ぎ目対策 |
| Denoise | どれだけ描き直すか |
| Upscaler | 拡大方式(R-ESRGAN など) |
| Seams fix | 継ぎ目専用の後処理。幅・ぼかし・Denoise を個別指定できる |
| Target size / Custom scale | 出力サイズの指定方法 |
触るのは Tile size / Padding / Mask blur / Denoise の4つで足ります。残りは既定のままで動きます。
公式の作例に載っている設定
配布元のREADMEには、実際の作例とそのときの設定が載っています。推測ではなく、作者が使った値です。
| 出力 | Tile size | Padding | Mask blur | Denoise |
|---|---|---|---|---|
| 2K | 512 | 32 | 16 | 0.4 |
| 2K | 768 | 55 | 20 | 0.35 |
| 4K | 768 | 55 | 20 | 0.35 |
| 4K | 768 | 55 | 20 | 0.4 |
読み取れることが3つあります。
1. Tile size は 512 か 768。 大きくすればいいというものではありません。
2. Padding と Mask blur は Tile size に連動する。 512 なら 32/16、768 なら 55/20 と、タイルを大きくしたぶん余白とぼかしも増やしています。
3. Denoise は 0.35〜0.4。 前述の 0.3〜0.5 の範囲の、真ん中あたりです。
出発点
迷ったらこの組み合わせから始めてください。
- Tile size: 512 / Padding: 32 / Mask blur: 16 / Denoise: 0.4
VRAMに余裕があり、時間を短縮したいなら 768 系に上げます。そのときは Padding と Mask blur も一緒に上げるのを忘れないでください。
継ぎ目が出たとき
タイル処理の宿命として、境界が線として見えることがあります。
対処は段階的です。
1. Padding を上げる
隣のタイルと重ねる幅が増えるので、境界が馴染みます。まずここです。
2. Mask blur を上げる
境界のぼかしが強くなります。上げすぎると細部が甘くなるので、少しずつ。
3. Seams fix を有効にする
それでも残るなら、継ぎ目専用の後処理を使います。幅・ぼかし・Denoise・Padding が個別に指定でき、処理方式も選べます。
順番を守ってください。 いきなり継ぎ目処理から入ると、そもそも Padding が足りないだけだった、という遠回りになります。
ComfyUI で使う
配布元のREADMEから、ComfyUI 向けの実装が別リポジトリとして案内されています。
ノードとして組み込む形なので、既存のワークフローの後段に置けます。生成 → 顔修正 → 拡大、という流れをそのまま繋げられます。
ComfyUI の導入は ComfyUI完全導入ガイド2026 を参照してください。
他の手段との使い分け
このサイトには拡大系の記事が複数あります。役割が違うので整理します。
| 手法 | 向く場面 |
|---|---|
| Hires.fix | 生成と同時に 1.5〜2倍。まずこれ |
| Ultimate SD Upscale | それ以上に大きく。VRAMが足りないとき |
| SUPIR | 劣化した画像の復元。要求は重い |
順序としては Hires.fix が先です。 生成時に当ててから、さらに必要なら本手法で伸ばす、という流れになります。
SUPIR は目的が別で、手元の生成物を大きくするだけならこちらのほうが軽いです。詳細は SUPIR 実践ガイド2026 を参照してください。
実務での組み込み方
同人CG集のように大きな画像が要る場面での流れです。
- 基準解像度で生成する(解像度とアスペクト比の選び方)
- Hires.fix で 1.5〜2倍
- 顔と手を直す(ADetailer完全ガイド)
- Ultimate SD Upscale でさらに拡大
4の前に3を済ませてください。 崩れたまま大きくすると、崩れも大きくなります。
納品サイズの考え方は FANZA同人でAI CG集を出す完全ガイド にまとめています。
よくある失敗
タイルを大きくしすぎる
「大きいほうが継ぎ目が出ない」と考えて上げると、VRAMの利点を捨てることになります。公式の作例でも 512 と 768 です。
Padding を据え置いたままタイルだけ上げる
作例では連動して上げられています。片方だけ変えると継ぎ目が出やすくなります。
Denoise を上げすぎる
タイル単位でも、上げすぎれば元の絵から離れます。0.4 を基準にしてください。
Hires.fix を飛ばす
生成時に当てずに後から大きくすると、低解像度の粗をそのまま引き伸ばすことになります。順序が大事です。
関連記事
- Hires.fix・アップスケール完全ガイド
- SUPIR 実践ガイド2026
- ADetailer完全ガイド
- 解像度とアスペクト比の選び方2026
- VRAM最適化ガイド:8GB / 12GB / 24GB
- ComfyUI完全導入ガイド2026
まとめ
要点は3つです。
1つ目、タイル分割なのでVRAMが上限を決めない。 配布元は「512x512 のタイルなら、どのビデオカードでも動く」としています。8GBでも4Kを狙えます。
2つ目、Denoise 0.3〜0.5 を使える。 Hires.fix では破綻する帯を、配布元は「アーティファクトが多く出ない」と位置づけています。ディテールを足しながら拡大できます。
3つ目、Tile size と Padding は連動させる。 公式の作例でも 512→32、768→55 と一緒に動いています。片方だけ変えると継ぎ目が出ます。
迷ったら Tile 512 / Padding 32 / Mask blur 16 / Denoise 0.4 から始めてください。作者自身が2Kの作例で使っている値です。





