このサイトではこれまで Wan 2.1 と FramePack を扱ってきました。オープンな動画生成モデルには他にも有力なものがあり、代表格が HunyuanVideo と LTX-Video です。
ただし、この2つは設計思想が正反対です。片方は品質のためにスペックを要求し、もう片方は速度と軽さを取りに行きます。
公式
- HunyuanVideo: github.com/Tencent-Hunyuan/HunyuanVideo
- LTX-Video: github.com/Lightricks/LTX-Video
仕様とライセンスは更新されます。導入前に公式で最新を確認してください。
先に結論:VRAMの壁
技術的な話より先に、実務で最初に効く事実を書きます。
HunyuanVideo の公式READMEには、必要GPUメモリが次のように記載されています。
| 解像度・フレーム数 | 最低GPUメモリ |
|---|---|
| 720×1280・129フレーム | 60GB |
| 544×960・129フレーム | 45GB |
| 推奨 | 80GB |
テストは単一の80GB GPUで行われたとされています。FP8量子化された重みを使うと約10GB節約できるという記述もありますが、それでも家庭用GPUの範囲を大きく超えます。
RTX 4090 でも 24GB です。 公式が示す構成をそのまま動かすことはできません。
この一点を知らずに導入を始めると、モデルのダウンロードだけで時間を溶かすことになります。
HunyuanVideo:品質のために重い
どういうモデルか
公式のAbstractによれば、13B超のパラメータを持ち、公開時点でオープンソースの動画生成モデルとして最大規模とされています。
技術的な要点として挙げられているのは次のとおりです。
- CausalConv3D を使った 3D VAE で映像を潜在空間に圧縮
- 圧縮率は時間方向4、空間方向8、チャンネル方向16
- これによりトークン数を大きく減らし、元の解像度とフレームレートでの学習を可能にした
評価
公式は、1,533のプロンプトで生成した結果を60名以上の評価者が判定したとしています。比較対象には Runway Gen-3 や Luma 1.6 などが含まれ、総合で最良、特に動きの質で優れるという結果が報告されています。
ただし公式自身が、この評価は高品質版に基づくもので、公開されている高速版とは異なると注記しています。ここは読み落としやすい点です。
現実的な選択肢
家庭用GPUで動かしたい場合、取れる手は限られます。
- FP8量子化版を使う(公式が重みを公開、約10GB節約)
- コミュニティの軽量化実装を探す
- クラウドGPUで80GBクラスを借りる
3番目は技術的には確実ですが、継続的に回すとコストが積み上がります。まず軽いモデルで用途に足りるか確認してからにしてください。クラウド側の考え方は クラウドAI画像生成サービス比較 にまとめています。
LTX-Video:速度と軽さを取る
どういうモデルか
公式は、現代的な動画生成の中核機能を1つのモデルにまとめた最初のDiTベースモデルと説明しています。掲げられている対応範囲は幅広く、
- image-to-video
- 複数キーフレームによる条件付け
- キーフレームベースのアニメーション
- 動画の延長(前方向・後方向とも)
- video-to-video 変換
- これらの組み合わせ
といった機能が並びます。
蒸留モデルという選択肢
LTX側の実務上の強みは、蒸留モデルを揃えていることです。
公式の更新履歴には、13Bの蒸留版と2Bの蒸留版が公開されており、同じベースモデルから蒸留され、同一パイプラインで併用できると記載されています。
さらに、13B蒸留版についてH100でHD動画を10秒、低解像度プレビューは3秒で生成という記述や、1GBのVRAMで動くLoRA版の存在も挙げられています。
「巨大モデルを軽くする」ではなく、最初から複数サイズを用意する設計思想です。HunyuanVideo とは対照的で、ここが選択の分かれ目になります。
長尺への対応
公式には、LTXV-13B で最大60秒の動画に対応したという記述もあります。短いクリップをつなぐ運用が前提だった領域で、これは実務的な差になります。
LTX-2 への移行
重要な注意点です。公式リポジトリには、LTX-2 が現在のLTX開発の主軸であると明記されています。
LTX-2 として掲げられているのは、
- 音声と映像の同期を1つのモデルで扱う
- ネイティブ4K、最大50fps
- 計算コストの削減
- 複数キーフレーム条件付け、3Dカメラ制御、LoRAファインチューン
といった内容です。
導入を検討する際は、旧来のLTX-Videoと後継のどちらを使うかを最初に確認してください。 情報を調べるときも、どちらの話かで前提が変わります。
3モデルの使い分け
このサイトで扱ってきた Wan 2.1 を含めて整理します。
| HunyuanVideo | LTX-Video | Wan 2.1 | |
|---|---|---|---|
| 設計思想 | 品質最優先 | 速度・軽さ | バランス |
| 必要VRAM | 45〜80GB | 蒸留版なら現実的 | 家庭用GPUで可 |
| モデルサイズ | 13B超 | 13B / 2B 蒸留版あり | 複数バリアント |
| 家庭用GPU | 厳しい | ○ | ○ |
| 日本語情報 | 少なめ | 少なめ | 比較的多い |
選び方
- VRAM 24GB以下で始める → Wan 2.1 か LTXの蒸留版
- 反復回数を稼ぎたい・試行錯誤したい → LTX の蒸留版
- 80GBクラスが使える環境がある → HunyuanVideo も候補
- 音声同期まで一体で扱いたい → LTX-2 系を確認
まず Wan 2.1 か LTX 蒸留版で動画生成そのものに慣れるのが遠回りしません。動画生成は静止画より試行のコストが高いので、軽いモデルで回数をこなせる環境のほうが結果的に上達が早くなります。
導入の順序は FramePack / ComfyUI Wan 2.1 実践ガイド の考え方がそのまま使えます。
実務での注意
情報の鮮度に注意する
動画生成は更新が最も速い領域です。この記事の数値も、公式READMEの記述を確認して書いていますが、版が変われば変わります。
導入前に必ず公式リポジトリの最新READMEを読んでください。 特に、
- 必要VRAM
- 公開されているバリアント
- ライセンス
の3点は、記事や解説動画の情報を鵜呑みにしないほうが安全です。
ライセンスは個別に確認する
モデルごとに条件が異なり、版によっても変わります。商用利用を考えるなら、使う版の配布ページとLICENSEファイルを個別に見てください。
読み方は AIエロ絵の商用ライセンス完全整理 にまとめています。
ストレージを甘く見ない
動画モデルは静止画モデルより重い傾向があります。複数モデルを試すつもりなら、ディスクの空きを先に確認してください。ダウンロードだけで数時間かかることも珍しくありません。
生成物の扱い
動画は静止画以上に、実在人物を想起させる表現への注意が必要です。技術的な可否と、やっていいかは別の問題です。この線引きは AI画像生成の著作権・法律ガイド に整理しています。
よくある詰まりどころ
HunyuanVideo が起動しない
VRAM不足がほぼ確実な原因です。公式の要件を確認してください。24GB環境では素の構成は動きません。
LTX でどのモデルを使うか分からない
蒸留版か通常版か、13Bか2Bか、そして LTX-Video か LTX-2 かを先に決めてください。公式の設定ファイル一覧が判断材料になります。
ComfyUI でノードが見つからない
各モデルに対応したカスタムノードが必要です。ComfyUI Manager で検索してください。LTX については公式が ComfyUI 向けのリポジトリとサンプルワークフローを公開しています。
生成が途中で破綻する
- フレーム数を欲張りすぎ
- 解像度が高すぎる
- 元画像(i2v の場合)が不鮮明
短く・小さく作って、良いものだけ伸ばすのが基本です。
その他の症状は AI画像生成トラブル辞典 を参照してください。
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まとめ
HunyuanVideo と LTX-Video は、同じ動画生成でも狙いが正反対です。
HunyuanVideo は品質のためにスペックを要求します。公式が示す最低45〜60GB、推奨80GBという数字は、家庭用GPUの範囲外です。触るならクラウドGPUが前提になります。
LTX-Video は逆に、13Bと2Bの蒸留版を揃えて速度と軽さを取りに行く設計です。試行回数を稼げるので、動画生成に慣れる段階では有利になります。ただし開発の主軸は後継の LTX-2 に移っており、どちらを使うかは最初に確認が必要です。
VRAM 24GB以下で始めるなら、Wan 2.1 か LTX の蒸留版。ここが実務上の結論です。





